東京を油田に。地域電力で環境と地域をハッピーに。世界の「環境の英雄30人」に選ばれた起業家
染谷ゆみ
株式会社ユーズ 代表取締役社長

東京は世界有数の油田!?

てんぷらや豚カツを揚げたあとの油、皆さんはどうしていますか?この油で車が走ったり、電気が灯せることをご存知でしょうか。

2009年、TIME誌が「世界の環境の英雄たち」に選んだ30人のうちの1人、それが染谷ゆみフェローです。家庭から出る使用済み食用油から、車を動かす燃料にもなり発電もできるバイオディーゼル燃料「VDF(Vegetable Diesel Fuel)」を作ることに世界で初めて成功しました。彼女はこの燃料のことを分かりやすく「てんぷら油エネルギー」と呼んでいます。

家庭から出る使用済み食用油。なんと年間20万トンにも及びます。2リットルのペットボトル1億本分。そのほとんどが、ゴミとして捨てられたり、生活排水として流されたり。しかし、使用済みの油は、燃料以外にも石鹸や家畜の飼料、畑の肥料などに再利用することができる「資源」なのです。使用済み食用油を「資源」として捉えたとき、東京をはじめとした大都市は「資源」の宝庫。彼女には東京が世界有数の「油田」に見えたと言います。

 

TOKYO油田」

top3染谷氏が18歳のとき。大学卒業後にそのまま就職することに違和感をおぼえ、アジアを回る旅をしていた際に、突然の土砂崩れに遭遇。被災した村人は「これは天災ではなく、森林伐採を繰り返し自然を破壊してきた人間が引き起こした人災だ」と言ったそうです。そのことが強く心に残り、「環境問題が自身のライフワークになる」と確信、帰国後家業の使用済み食用油の回収・リサイクル事業を行う「染谷商店」に入社します。当時はバブル期。大量生産・大量消費が当たり前の中で「リサイクルはこれからトレンドになる」という思いは、周囲から理解が得られず共感されることもほとんどなかったといいます。毎日油まみれになって使用済み食用油を回収する姿を不思議そうな目で見られていたそうです。その頃浮かんだ言葉が「TOKYO油田」でした。「自分は東京という油田から油を掘り起こしている、そういう夢のある仕事をしているんだ」と気が付いたのです。そこからてんぷら油で車を走らせる構想が見え、株式会社ユーズを立ち上げるに至ります。

 

VDF」で車が走り電気が灯る

使用済み食用油は化石燃料とは違い、菜種や大豆から生まれた植物油。これを燃やしても酸性雨の原因となる硫黄酸化物が発生しません。呼吸器障害の原因となる黒煙も軽油の2分の1以下。走行性・燃費・価格、どれをとっても軽油と比べて遜色ありません。VDFの引火点は185℃。軽油が約50℃であるのに比べると保管しておく上でも安全です。そして、車の改造は一切不要ですべてのディーゼル車に使用できます。

100リットルの使用済み食用油から精製されてできるのは95リットルのVDF。自社の油回収車はもちろんのこと、東京自由が丘と目黒通り周辺のお店や施設を結ぶ送迎バス、有機食材宅配の「大地を守る会」の宅配車、トラクターなどの燃料にも使用されています。また、アースディ東京などのイベントにおいてはVDF発電で電気が賄われています。

現在使用済み食用油を回収するステーションは都内に約140箇所。それ以外に行政の回収ステーション、直接回収する先の飲食店があります。染谷氏は回収先を増やすことにも尽力しています。ある一定量の燃料を回収するためには当然のことなのですが、それだけではなく、VDFが欲しいという人には、燃料を受け取るだけではなく、自分たちの手で使用済み食用油を集めることも同時に行ってほしい、それでこそ捨てるという行為に責任を持つことにつながり、廃棄されるものが資源として生まれ変わるという循環を実感してもらえると言います。

 

2017年、東京のてんぷら油を一滴残らず資源化する

11017519_1668618023357564_4418352711747163754_n東日本大震災ではVDFの価値を再確認したと染谷氏。ガソリンが不足する中、燃料を提供したり、発電を手助けすることで役に立ちました。そして福島の原発事故。原発を含めたこの社会をなんだかんだ容認してきてしまった自分にがっくりきた、もっと早くに油田化計画を実行していればと後悔します。日本はもともと資源の少ない国だからこそ、今ある資源をいかに有効活用するかを考えることが急務。「私たち世代が、この先の世代を見据えて果たさなければならない使命」だと語ります。

東京の使い終わったてんぷら油を一滴残らず資源化する「TOKYO油田2017」プロジェクト。目標の2017年が目前に迫る中、染谷氏の動きもますます加速しています。

 

そして今__自分たちが生み出すエネルギーで、自分たちの住むまちを素敵にしていくプロジェクトを始める

11800285_10206325768755770_2326293145358535885_n 2016年4月の電力小売り全面自由化を受けて、染谷氏は新たなステージに進もうとしています。それは使用済み食用油による地域エネルギー事業の立ち上げです。使用済み食用油からつくった電気を、まずはおつきあいのある数十社の町工場に販売し、これまでの電気料金より安くなった差額を地域に寄付していく、という構想です。自分たちが生み出したエネルギーが自分たちの住むまちを素敵にしていく、とても素敵なプロジェクトです。

 

染谷ゆみ(そめや・ゆみ)プロフィール

1968年東京都墨田区出身。86年、高校卒業後アジアを巡る旅の途中、環境問題をライフワークにすることを決意。旅行会社へのアルバイト入社を経て、91年、油リサイクル業を営む実家「染谷商店」に入社。93年、世界初の使用済み食用油からのバイオ燃料「VDF」を開発。「TOKYO油田」というフレーズのもと、循環型社会に向けた事業を展開。97年、株式会社ユーズを設立。「TOKYO油田2017年」に向け、使用済み食用油の資源化だけにとどまらず、啓発活動などにも力を入れる。

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