最大限の安心と最小限の環境負荷を追及。こだわりぬいた世界ブランドのタオルをつくる
池内計司
IKEUCHI ORGANIC株式会社 代表取締役社長

「最大限の安全と最小限の環境負荷」を実現するタオル

皆さんは、ふだん使うタオル1枚に、どれだけこだわりを持っているでしょうか。タオルは人からいただくもの、と思われていませんか?

国内で販売されているタオルの8割が輸入品。そのような中、「この会社のつくるタオルが好き」と選ばれ、繰り返し購入する根強いファンを獲得している企業が愛媛県今治市にあります。顧客の47%がリピーターというテキスタイルメーカー、IKEUCHI ORGANIC株式会社です。今治市というと、「今治タオル」の名で知られる世界でもトップのタオル生産地。100を超えるタオルメーカーがひしめく中、「IKEUCHI」がつくるタオルを選ぶ理由はどこにあるのでしょうか。

同社を一躍有名にしたのが商品、『風で織るタオル』。工場やオフィスで使用する電力の100%を風力発電でまかなっていることからその名がつけられ、ニューヨークで開催されたホームテキスタイルショーでは最優秀賞を受賞しました。

もちろんそれだけにとどまりません。タオルの全製造工程を見直し、環境に負荷をかけない染色技術や廃水処理技術を作り出してきました。例えば、染色後の廃水は世界一厳しいとされる瀬戸内海の排水基準をクリアする浄化施設で、バクテリアを使って長時間かけて処理されています。また、原料である綿花にもこだわり、3年以上無農薬の農場で栽培されたオーガニックコットンを使用。同社製品のオーガニック率は99.98%。残り0.02%はミシン糸と刺繍糸だそうで、これを100%にすることを目指しています。

さらには、消費するものを生産する企業活動自体が環境負荷を与えるとし、できるだけ長く高品質が続き、買い替え頻度をおさえる製品づくりをすることもブランドコンセプトの大きな柱となっています。

タオルの安全性にもこだわります。タオル1枚を構成する原糸、縫糸、刺繍糸、ラベル、染料や糊剤、全情報を世界的な認証機関に提出し、発がん性染料や重金属など法定の禁止物質のほか、健康に有害であることが知られている化学薬品などの影響を測定し、赤ちゃんが口に含んでも安全なレベルをクリアしているのです。2015年には、国際標準化機構ISOが食品の安全性を確保するために制定した国際標準規格、ISO22000を業界で初めて取得。この「最大限の安全と最小限の環境負荷」を追及した真に高品質なタオルが、顧客から強い支持を得ているのです。

 

苦境を乗り越え現在の姿に

 国内外から評価される「IKEUCHI」。しかし、10数年前は苦境に追い込まれていたのです。

池内が2代目社長として家業を継いだ時代は、海外で生産された安いタオルが出回り、国内のタオル業界は斜陽産業と言われていました。今治でも高級ブランドのOEM(他社のブランド製品の製造を請け負うこと)製品をつくるメーカーが主で、「IKEUCHI」も99%がOEM製品でした。そんな中、売上の7割を依存していた取引先の倒産により、数億もの負債を背負うことに。建て直しにあたり池内は、当時扱いが1%だった環境負荷を追及した自社ブランド製品にかけることを決断します。OEM製品での再生はまた同じことを繰り返してしまうだけだと判断したことに加え、『風で織るタオル』を支持するファンから応援メールをたくさん受け、「いける」という感覚になったといいます。そこから同社の“偽らないものづくり”が追及され続けています。2003年には700万だった自社ブランド製品の売上が2010年には4億円になり、現在は年商5億円の企業となりました。

 

ORGANIC」に込められたもの

2011年、『コットンヌーボー』というブランドが生まれました。ワインのように、その年その年のタオルの味わいを愉しむということで名づけられた試みで、背景にタンザニアのオーガニックコットン生産者を応援し育てていくという意志が込められています。

世界の畑で最も多くの農薬が使われているのが綿花といわれています。一般的に仕入れ側が、量や質の安定性を条件とするため、多くの生産者が経済的に安定する道を選び農薬を使用します。

しかし、「IKEUCHI」は、無農薬の綿花にこだわりました。安定しない収穫量や品質の差を逆手に取り、「毎年違う」ことを最大の特徴にしたブランドが、『コットンヌーボー』。タンザニアの生産者と継続的に安定した価格での取引を約束し、誠実に生産者を守り育てる努力をしています。

「一度当社の製品を手に取った顧客に、その次も、またその次も満足してもらうために製品を磨き続けている」と池内は言います。製品作りに徹底的にこだわる企業姿勢、そしてパートナーとの関係づくりにもこだわる姿勢は、顧客はもちろんのこと、社員との関係も緊密なものとしています。全国から入社を希望する若者が引きも切りません。そして社員自ら自社製品に誇りをもって働いているのです。「何をつくれば売れるのかではなく、自らつくりたいものをつくるということで経営が成り立っていることは最高に楽しい、IKEUCHI ORGANICの生き様そのものが商品である」と池内は言い切ります。

社名に掲げられた「ORGANIC」。それには、製品の原料や製造工程が有機であるだけでなく、それによってステークホルダーとの関係性もORGANIC、心地良いものにしていこうとする想いが込められています。

 

池内計司(いけうち・けいし) プロフィール

1949年愛媛県今治市出身。71年、松下電器産業(現パナソニック)に入社。83年、池内タオルに入社し代表取締役に就任。風力発電100%による工場稼働や業界初のISO14001認定などを経て、99年に立ち上げた自社ブランド「IKT」は、日本のみならず欧米でも高く評価され、02年には「ニューヨーク・ホームテキスタイルショー・2002スプリング」で、日本企業として初めて最優秀賞を受賞。07年にはOECO社デコレックスインターナショナル(ロンドン)で“Best New Award”受賞。その後も数々の賞を受賞。14年、社名を「池内タオル」から「IKEUCHI ORGANIC」に変更。15年にはISO22000(食品安全)の業界初の認定を受ける。16年4月、京都市が選ぶ「これからの1000年を紡ぐ企業」に認定される。

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