カフェを基点に美しい山里と宇宙をつなぐ「芸北ぞうさんカフェ」プロジェクト

芸北に不思議なカフェ出現

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広島県北部にある北広島町芸北(げいほく)に2012年5月、「芸北ぞうさんカフェ」というユニークなカフェが誕生しました。キャッチフレーズは「冒険カフェ」。あえて特定のコンセプトを絞らずに、何にでもチャンレジしたいという思いが込められています。

メニューには、オーナーにゆかりのある海外や地元の自然素材を生かした伝統料理が並び、ショップフロアには、動物をモチーフにした自然素材の雑貨からアンティーク雑貨、オーガニック食品などが並んでいます。店の中央には大きな薪ストーブが鎮座し、暖かみのある居心地のいい空間に仕上がっています。

ぞうさんカフェでは、コンサートや映画鑑賞などのイベントも頻繁に開催され、小さな山里にもかかわらず、毎回多くの人が訪れます。このカフェに出会ったことをきっかけに、「新しいことにチャンレジしたい!」と都市部から移住してくる人が出てくるなど、どこか人を引き付ける魅力があるのです。

 

「野良象」のフンを原料に起業

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ぞうさんカフェのオーナーは植田紘栄志(ひさし)さん。東日本大震災を機に、自給自足ができる地を求めて、東京から母方の実家がある芸北に移住しました。

もともとは印刷業界に従事していた植田さんは、ひょんなことからスリランカに縁を得て、象のフンを原料にした再生紙ビジネスに乗り出すことになります。日本では考えにくいことですが、スリランカでは野良犬ならぬ「野良象」が町中を闊歩。森林伐採が進むなか、すみかを失った象が町に現れるようになり、畑を荒らしたり、人間に危害を加えるようになっていたのです。

大量のフンが町中あちこちに散乱する様子を見て、生来の冒険心がむくむくと頭をもたげ、「ビジネスチャンスかも!」と閃いた植田さんは、苦難の末、再生紙「ぞうさんペーパー」の製品化に成功。いまでは、日本でも動物園内の売店など70カ所で販売されているほか、海外にも輸出しています。現地では、ゾウと人間がうまく共存できるビジネスモデルが評価され、本来のすみかである森林保全の取り組みも始まったといいます。

NASAを蹴って芸北の地へ

12189582_446230465578113_6746519818107616755_n植田さんの人柄やぞうさんカフェの魅力に惹かれ、芸北に移り住んだ一人が井筒智彦さんです。

東京に生まれ育った井筒さんが移住したきっかけは、オーロラの研究に没頭していた東京大学の大学院時代に遡ります。たまたま知った植田さんの活動に心を惹かれ、芸北で就業体験することに。いったんは東京に戻り、2013年3月に博士課程を修了。同年5月、アメリカ航空宇宙局(NASA)への就職を蹴って芸北に移り住みました。

ぞうさんカフェでは、音楽のライブを始め、さまざまなイベントを開催していますが、「宇宙映画祭」や「星空観観測会」など、宇宙や天体関連も多くあります。その仕掛け人が井筒智彦さんなのです。

現在、宇宙へのロマンをテーマに、美しい山里の魅力を発信する、さまざまな町おこし企画に取り組んでいます。最も力を入れている取り組みの1つが、伝統的な、地域の保存食を宇宙食にするプロジェクト。うまく軌道に乗れば、豪雪地帯に伝わる保存食の価値と、芸北地区をアピールする絶好の機会になるに違いありません。

野性と宇宙につながる冒険基地

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芸北地区のある北広島町は、島根との県境にある豪雪地帯。そこで植田さんは、農業はもちろん、狩猟や漁業にも自ら挑戦し、自給自足に向けた地盤を固めようとしています。

そうはいっても、目指すのは単なる、いわゆる「田舎暮らし」ではありません。カフェでぞうさんペーパーの紙すき体験ワークショップを開いたり、米の収穫後のハデ干し体験と星空観察会を組み合わせたり、芸北らしいツーリズムの事業化を試行錯誤しています。

植田さんにとって「ぞうさんカフェ」は、野性を取り戻すための、あるいは宇宙につながるための「冒険基地」のようなものかもしれません。豊かな水資源に育まれ、また活断層もなく、標高が高いために洪水の心配もない安心安全な地で、ぞうさんペーパーに次ぐ新たなビジネスの種を探して、植田さんの冒険は続きます。

 

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